この夏、久しぶりにフィンランドへ行く予定だ。
そろそろ、向こうで会う人にお土産を考えている。
今までも色々なものを持っていたが、24年前の思い出されるエピソードをひとつ。
当時の私は渡芬時に5円玉をかき集めて持っていた。
穴の開いたコインというのは世界的にも珍しいと聞いたのだ。
旅先では予期せぬ出会いがある。
思いがけず親切にしてもらったり、助けてもらったり、
そういう方にサッと渡せる気軽なお土産(あるいはお礼)として用意した。
そのおじいさん二人と出会ったのは教会の隣のカフェだった。
田舎からわざわざ教会に来たという信心深いおじいさんたちと、
ただ席が隣になったという偶然だけでコーヒー片手におしゃべりが始まった。
(と言ってもおじいさんたちは英語が話せず、ファミリーが間に入ってくれた)
彼らは、日本という未知の国に興味を持ってくれ、質問もたくさんしてくれた。
会話が弾んで、楽しい時間を共有できたので、私は記念にと5円玉を差し出した。
もちろん「このコインには、“ご縁がありますように”という意味もあるのだよ」と、
添えて。
私にとっては気軽なモノだ。見慣れたアイテムだし、はっきり言って価値も5円だ。
それ以上でもそれ以下でもない。
しかし、2人ともこちらが恐縮するくらい、深く感謝の意を表現してくれて、
「じゃ、わたしたちも」とフィンランドマルッカ(ユーロになる前のフィンランドの通貨)をくれたのだ。
私は恐縮した。だってそれは500円相当だったから。
5円を500円と交換。海老で鯛を釣るとは、このことか!!!
辞退をしようかと考えたけれど、結局私はおじいさんたちのご厚意を素直に受け取ることにした。
それはお互いにコインは記号でしかなく、
一緒に話した時間こそがプライスレスだと分かっていたからだ。
ほんのひとときの心の通い合いだったけど、私にとっては忘れられないエピソードだ。
おじいさんたちはその後5円玉をどうしたかな。
そんな想像をするのも楽しい。
この夏もそんな思い出が増えるかな……と5円玉を集めてみるが、24年も経つとキャッシュレス化で思うようにいかない(笑)
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【過去のイラストエッセイ記事】
・改めて、自己紹介編(https://tavatabito.net/2023/04/19/essey10/)
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イラスト担当megu.megoより一言
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