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TAVATABITO BLOG

冬を越すのは命がけ(シリーズ:フィンランド語講師がみたスオミ)


タバタビトでフィンランド語のオンライン講座を担当する本多雄伸先生。
先生の初渡芬は1967年!約50年前の話となります。
これは、貴重なお話がいっぱいあるに違いない!ということで、
シリーズ化して、先生のお話を伝えていきたいと思います。
2回目のテーマは「冬を越すのは命がけ雪」です。
どうぞ、お楽しみ下さい。
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タバタビト:私は動きやすい時期(夏)に渡芬することが多く、フィンランドでの冬の生活をガッツリ経験していないのですが、今回は冬のお話をお聞かせください。
本多:はい。まずはフィンランドへの渡航準備をしている時に、高校の地図帳の巻末にある世界各地の月間平均気温や降雨量の表からヘルシンキの気候を調べました。
タバタビト:当時(1967年)は現在のようにインターネットで手軽にフィンランドの天気を知ることはできませんよね。
本多:そうですね。そこで得た情報では1月の平均気温は-4℃とあり、「何だ、随分暖かいなぁ」というのが第一印象でした。
タバタビト:実際にはどうでしたか?
本多:行って見て驚きました。-10℃、-15℃は当たり前、冷え込むと-25℃にもなるのです。ダイヤモンドダストがキラキラ舞う気温です。
タバタビト:それは、ずいぶん前情報と違いましたね(笑)
本多:本当に驚きました。それでも市民の生活は、夏と変わらず淡々と行われています。
タバタビト:逆にフィンランドの方が東京の夏を経験したら、同じように、「サウナみたいに暑いのによく暮らしているなぁ」と言うでしょね!
ちなみに当時経験された最低気温はどのくらいだったのでしょうか?
本多:私の経験した最低気温はケラヴァ(Kerava)で-32度です。この時は寮から職場へ5分ほどの歩行距離も危険に感じました。平均気温ほどあてにならないものはないと実感しましたよ。
タバタビト:ヘルシンキ郊外で、-32度!フィンランドも日本と同じように南北に長いので、オーロラを観測&サンタクロースで有名な北の方はそういう気温も想像できますが、フィンランド南部でもそんなことがあるのですね。
先生は当時、どのようなところにお住まいだったのでしょうか?
本多:フィンランドで最初に過ごしたケラヴァの家は、木造2階建ての寮で、夫婦ものや単身者が住んでいました。がらんとした大きな部屋で、買ってきた牛乳やソーセージは、腐らぬよう二重窓の間に保存します。
秋から翌年の春までは、外気が冷え込み、真冬はマイナス20℃にも、いやもっと低くなるので2枚のガラスの間は室温20℃との中間、0℃位になり、丁度良い冷蔵庫となります。なので食料品は、二重窓の間に入れることが習慣となりました。
タバタビト:天然の冷蔵庫ですね。
本多:そうです。
タバタビト:二重窓の間は冷蔵庫向きのようですが、部屋の中はどうだったのでしょか?
本多:こうして生活していても室温があまり上がりません。室温を20℃に保つためには、窓と窓枠の隙間を部屋側から紙のテープで目張りするということを教えられ、雑貨屋から買ってきた紙テープ(ikkunapaperiイックナ・パペリという)を水につけ、しっかり貼りつけました。勿論、外窓、内窓ともに貼ります。食料品を出し入れする窓以外は、ぴったりとテープを貼り、これで外気の侵入は防げました。


タバタビト:なるほど。それ以外にはどのような方法がありましたか?
本多:部屋の暖房は、耐火レンガを積み上げ、表面を化粧タイルで装飾した薪窯(♪雪の降る夜は楽しいペチカ~、のペチカ)です。この使い方が南から来た外国人には難しく、憶えるまでにずいぶん寒い思いをしました。


タバタビト:このような薪窯は確かに扱いにコツが必要そうですね。
本多:夏の終わり(8月中旬)に大量の薪を用意して、外気が通るようにドアを開け放って火をつけます。先ほどお話した通り、室内は完全密閉なので、酸欠にならぬようドアを開けておきます。朝からガンガン燃やして、耐火レンガを暖め、夕方頃には温まったレンガから暖かい輻射熱が部屋中に広がります。そうしたら火を落して煙突からの冷気が逆流しないよう写真の左上にある2本の棒を操作して煙の道を閉じておきます。
タバタビト:日本の感覚でいくと8月の中旬はまだまだ残暑も厳しくて、冬の準備をする気にもなりませんが、そんなに早くから準備が必要なのですね。
本多:そうですね。そしてその後は、1日1回、一抱えほどの薪を燃やしてレンガに熱を追加すると一冬中、室内で半袖で過ごすことができます。
タバタビト:室内で半袖!東京の冬の室内よりも快適に過ごせそうですね。とはいえ、薪を毎日燃やすというのは、危険も伴いそうですが
本多:そうですね。実際危険なことがありました。
この2本の棒の先は、板状になっていて、煙道を開閉するバルブの役目を持っています。この適切な操作が難しく、開け放っておくと冷気が逆流するし、完全に閉じてしまうと残り火が不完全燃焼を起こし、一酸化炭素中毒になってしまいます。
ある晩遅く帰ってきた同室の日本人の居候が、この棒を閉じて寝てしまい、翌朝目を覚ましたら始業時間を過ぎており、ベッドから起き上がったら後頭部を殴られたようなめまいと吐き気とで、もう少し寝ていたら死んだかもしれないという事件があり、この寮から撤退しました。
冬を越すのは命がけです
!
タバタビト:それはゾッとするような九死に一生の経験ですね!大事にならなくて本当に良かったです。
今回お伺いしたお話は1967年当時のことですが、現在のヘルシンキの住宅事情は変わっていますでしょうか?このような薪窯で暖をとるおうちは減っているのでしょうか。
本多:リンナンマキ遊園地の東側に「労働者住居博物館」
(Työväenasuntomuseo http://tyovaenasuntomuseo.fi/)という市立博物館がありますが、この敷地内にまだ当時と同じ生活をしている人たちがいます。しかし防火のため薪暖房は規制されて、灯油または電気に切り替わっています。戸建て住宅では、戸建て住宅用のセントラルヒーティングが主流となり、私が過ごしたような生活は、多分博物館に行かなければもう見られないでしょう。
タバタビト:なるほど、大変貴重な体験ですね。今回も興味深いお話をありがとうございました。

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本多先生が担当するフィンランド語講座。
次回は2016年4月開講です!
オンラインで全国どこにいても学習できますよ。

<初級>
http://tavatabito.net/suomea-lv1-20160401.html
<中上級・添削講座>
http://tavatabito.net/suomea-lv2-20160401.html
【本多雄伸先生のプロフィールはこちら】
http://tavatabito.net/suomea-opettaja.html
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