Vol.3

文:maru /絵:nashie

「森」
今回のテーマはずばり「森」です。
山ガールに圧され気味で死語となりつつある「森ガール」。
この言葉が流行った時に、
わたしは「森ってうららかで恵みにあふれた良いイメージだけでなく、
神秘的で畏れ多いものでもあるのだよ」と思ったものでした。
日本で都会に住む人にとっては信じられないことですが、
フィンランドの人にとって、「森」は身近なものです。
それはヘルシンキのような都会に住む人でも例外ではありません。
週末や、長期休暇には湖畔にあるサウナ小屋を目指し、自然を満喫します。
ベリーやキノコの季節には、森に入って収穫を楽しみます。
彼らは自分たちのことを「今しがた森から出てきたばかりの民」と言います。
だから、NOKIAを片手に、電波でどこまででも他人と繋がりながらも、森へ踏み入ります。

フィンランド人と森。
その感性を味わえる、とっておきの2冊をご紹介します。



「フィンランド・森の精霊と旅をする」プロダクションエイシア
(前回のコラムでもご紹介しましたが、違う観点で書きます)

日本に伝わる昔話や伝統的な行事と同じように、
フィンランドの森の中にも言い伝えや、失われつつある歴史的存在があります。
それを2人のフィンランド人女性カメラマンが収めた壮大な写真集を、
日本語版にコンパクトにまとめたものが本書です。

いくつもの興味深いエピソードがあるのですが、わたしが特に心を揺さぶられたのは、
"カルシッコ"です。
カルシッコとはいわば木碑であり、松の樹皮を削り、
亡くなった方のイニシャル、生年、没年が彫られる儀式的なものです。(一部地域に伝わる)
注目すべきはだんだんと皮が再びかぶさりゆっくりと閉じていくのに、
ちょうど3世代ほどの時間がかかるという事実。
つまり、ある一人が亡くなった時にそこに刻印されたものが、完全にふさがれるまでと、
その人を(直接)知る人間(孫世代)がいなくなるまでの時間がほぼ同じなのです。
本書ではこのカルシッコが徐々に木々の生命力に包み込まれて、
閉じられていく様子も記録されています。
その美しくも儚く、寂しささえ漂う記録写真は圧巻です。
また、そのカルシッコに寄せる人々の言葉も、写真と相まって感動を与えてくれました。

他にも、自分たちの祖先は「熊と少女の結婚」により生まれた。
そんなまことしやかにフィンランドに伝わる伝承も紹介されています。
「フィンランド・森の精霊と旅をする」というタイトルにふさわしい、
森の神秘的で畏怖的な雰囲気を存分に伝えてくれる1冊です。




「フィンランド×森」(情報センター出版局) 森下圭子著

本書は実際に片手に持って、フィンランドの森を「フィンランド人と同じように」楽しめる
ガイド的な1冊です!

フィンランドの人は森で何をするの?
森の中での定番おやつは?
いざ、森に入るときに必要なものは?
どこの森がオススメ?

そんな疑問の全てに、くまなく解説がついています。
シーズンごとの森の表情や、旅行者でも行ける森なども紹介されていて、
まさに、痒いところに手が届く1冊。
これを読めば、フィンランド人がどんな風に森と密着しながら過ごしているかがわかります。
また、森初心者には嬉しい、
国立公園でのトイレの使い方や、焚き火の消し方のルールなども親切に書かれているので、
フィンランドの森ガール(ボーイ)を目指す方のHow to本としてもオススメ♪
何より、写真が豊富なのでイメージがふくらみやすく、
あっと言う間に、(それが例え都会の満員電車の中でも)フィンランドの森へ連れて行ってくれます。
「なかなかフィンランドへ行けないよ。」という人は、バーチャルな森体験をお楽しみ下さい!!
読後は森林浴の後のような爽快感が残るかもしれません。


森と湖の国と呼ばれるフィンランド。この国をより深く知るのに「森」は欠かせません。
フィンランドの森を知らずして、フィンランドを語るな…とまでは言いませんが(笑)
ぜひ、今回ご紹介した2冊を読んでみて下さい。自信をもってオススメします。




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