Vol.1

文:maru /絵:nashie

「フィンランド語」なんてひとつも知らない!と、いうセリフを今まで何度耳にしたことでしょう。
でもね、「まぁまぁ、お待ちなさい」、、、と一呼吸おいてから、
わたしが堂々と持ち出す単語は「サウナ」です!
まるであの有無を言わさない印籠のように、あなたの前にバンッと差し出すことができます。
日本で有名な(あるいは一番使われている)フィンランド語はおそらく「サウナ」で間違いない(でしょう)。
どうですか「SAUNA」。
聞いたことあるでしょう?イメージできるでしょう?
フィンランドとイコールで知られている「サンタクロース」や「ムーミン」や「オーロラ」を
フィンランド語に変換できる人は少ないのに、「サウナ」はフィンランド語だと知られずに、
実に多くの人に親しまれている単語です。
でも、それだけ認知度のある「サウナ」というものが、その正しいトコロまで、
その名前と共に伝わっているのでしょうか…。
そこで今回は、いわゆる日本で浸透している「サウナ」と、
フィンランドの湖畔に存在する「サウナ」のギャップを埋める本を何冊かご紹介します。
 
「サウナ好きな国民」などという形容では安易過ぎるほど、フィンランド人にとってのサウナとは。。。
紐解いてみると、実に実に奥が深いのです。
タバタビトの資料室でも、これだけの本をスグにピックアップすることが可能なのです!

「フィンランド語は猫の言葉」(講談社文庫) 稲垣美晴著

わたしが初めてフィンランドへホームステイしたのは1999年。
当時は今ほどフィンランド関係の出版物はなく、フィンランドファンのバイブルと呼ばれたこの本を、渡芬した誰もが読んでいた。(といっても過言ではありません)
この本は、1976年、日本でまさかこんなにフィンランドブームが起きるとも予想もできない時代に、筆者がかの地へフィンランド語を学びに行った留学記です。
ただひたすらに勇気や元気をもらえる体験記としてもオススメできる、ユーモアにあふれた卓越した文書に、グングン引き込まれてみてください。
そしてこの本の中で、まさに鬼気迫る!緊迫感あふれる!「サウナに閉じ込められたエピソード」が実体験として紹介されています。
その文章を目で追いかけながら、その時の著者にグイグイっとリンクして、心臓はバクバク、冷や汗は背中をツターと下り、そのあまりにもリアルな感触は、あれから何年経っても払拭できません。
おまけにわたしは「フィンランドサウナ未体験」状態で、この本を読んだおかげで、フィンランドサウナのイメージは、これですっかりロックオン。いざ渡芬して、初めてファミリーの家のサウナに案内されたときには、まず、ノブと鍵が正常であるか確かめたことは言うまでありません。万が一閉じ込められた時のことを考えて、数十年経った今でも、例えそれがどこであろうと、フィンランドでサウナに入室する時は注意を怠りません。

「わたしのマトカ」(幻冬舎) 片桐はいり著

言わずと知れた「かもめ食堂」の撮影エピソードなどが、出演者の片桐はいりさんによって語られます。
なんとここでも、暑いサウナでの背筋が凍るエピソードが紹介されているので!
旅行客が行くホテルのサウナではまずこんなことは起こらナイでしょうが、オモシロ体験談としても一読の価値はあります。
そして、「初めてのフィンランド」に素直に溶け込み、歯に衣着せずに表現する文体に引き込まれます。
何より、稲垣美晴氏、片桐はいり氏両者とも、読みやすく楽しいユーモラスな文章運びが爽快です!
是非とも肩に力をいれず、ニュートラルな気持ちで手にとってみて欲しい2冊です。 

さて、いきなり、サウナの「ハプニング編」を紹介してしまいましたが、
もちろんフィンランドサウナが人々を夢中にさせる魅力をシンプルに伝える本だって存在します。

「アルヤ心の詩(サウナと神話に癒されて)」(清流出版) アルヤ・サイヨンマー著

フィンランド人アーティストによるエッセイです。歌手である彼女がサウナの神秘的な情景や、逸話を詩的にまとめた1冊。
フィンランド人にとって、サウナがただの「体の清浄の場」ではないことを、
「知識」ではなく「感覚」で得ることができます。
ストレス・コンプレックス・焦り・後悔・嫉妬といった、ありとあらゆる"人間的しがらみ"から解放される瞬間。
湖畔のサウナ小屋にはそんな神がかり的な方法で心身を癒す力が宿っている。わたしも何度も体感した心のセンタク。
その「言葉にはし難いセンス」を実に見事に表現しているのです。とにかくオススメの一冊です。

「フィンランドの森の友達」(岩波書店) 津村喬・高野和子著

気功を教えにフィンランドを訪れた著者が、地元の人々と触れ合いながら様々な場所で体感したサウナについて記述しています。「自然のエネルギーをもらいながら、自分の中のエネルギーを整える、それがサウナ」という、どこか「気功」にも通じるような一文にグッと魅せられます。
サウナに入り、目の前の湖に飛び込む。かすかな水音と、鳥のさえずりしか聞こえない。
そこにあるのは自然と自分と、家族だけ。そんな偉大な宇宙観をサマーコテージで得るのはたやすいのです。

さて、ここからは、さらに「フィンランドサウナ」について深めたい方や、
視点を変えて"識りたい"方への推薦書です。(※入手が難しい)

風呂FURO&SAUNAサウナ」 日本の風呂とフィンランドサウナの共同展図録

日本の風呂とフィンランドのサウナの共同展(1997)の図録です。日本人にとっての「入浴」は欧米人にとってはしばし理解されにくいのは周知の事実です。伝統的な儀式や、風俗的習慣もあり、社交の場でもあります。
日常的要素もあれば、温泉のようにスペシャルな一面も持ち合わせています。体を洗う場、健康を促進するツール…それ以上のものが、「お風呂」には属性しています。と、ここまで書くとピンときましたか?フィンランド人にとってのサウナとの類似点に!
わたしもフィンランドでサウナでもてなされた時に、「裸の付き合い」が通じるヨーロッパ人がいることに感嘆しました。
そんな両国の「風呂」「サウナ」は別の起源を持ちながらも、その共通点の多さに感動を覚えるものなのです。そんな独自の観点がつまった、非常に興味深い1冊です。

英文(またはフィンランド語)ではありますが、サウナの歴史や基本的なことを知りたい! という願いを叶えてくれる本もメモしておきます。
「SAUNA The Finnish Bath」
「SAUNA」

※この本は洋書の古本であるため、入手は難しいかと思われます。
興味のある方はタバタビトの資料室でご覧ください。

 

tavatabito資料室----